「シュレーディンガーの猫」の解釈について考え初めてから1年以上経過したが、まだ、頭の中のモヤモヤした霧が完全には晴れてはいない。シュレーディンガーの猫やEPRパラドックスのもとになっているのが、2重スリット実験に端を発した観測問題である。
そこで、なんとも不思議な2重スリット実験についてもう少し掘り下げて考えてみた。その結果、頭の中の霧が完全に晴れて、やっと、すっきりすることが出来たので、それについて述べたいと思う。「シュレーディンガーの猫」とダブっているところが多いですがお許しください。
いくつかの仮定を導入しているので、完全な理論というわけではないが、量子力学の謎解きに挑戦している人のヒントになれば幸いです。
専門家の方の中には、「なんてばかなことを言っているのか」と笑う人もいるでしょうが、ド素人の独り言だと思っていただければ、結構です。
ただ、私には、半死半生の猫や、多世界解釈、何光年も離れている素粒子同士が瞬時に情報交換できるということは、どうしても受け入れられなかったのです。
【注意】
「シュレーディンガーの猫」、「2重スリット実験」、「観測問題」などという言葉を聴いたことがない人は、これからの話は”ちんぷんかんぷん”になってしまうかも知れません。そのような人は、このページの最後に紹介しているサイトを先に訪問すると良いかも知れません。
現在の量子力学において、電子は、粒子としての性質と波(波動)としての性質を併せ持っていると考えている。2重スリット実験では、電子は波となって2つのスリットを同時に通過し、スクリーンに痕跡を残す。これを繰り返すとスクリーンに縞模様が現れる。
これこそが電子が波としての性質を持つ証拠である。(ここまでは納得)
粒子の電子はイメージできるけど、波(波動)の電子はイメージしにくいですよね。
波の状態になった電子は、複数の場所に同時に存在し、存在確率でしか表せない。
では次に、私が頭の中に描いている波の状態にある電子のイメージについて説明する。
まず、1個の粒子状電子をイメージしていただきたい。(これならイメージできますよね)
その粒子状電子は、じっとしておらず、ある範囲の中をランダムに動き回っている。(ブラウン運動のイメージ)
そうして、動き回る速度をどんどん速くしていこう、もっと、もっと速く!
やった!!。
ついに光の速度を超えました。
ここで終わりではない。もっと速くだ。
そう、速度無限大。
これこそが、電子の超光速ランダム・ホッピングである。
(必ずしも速度無限大である必要はないが、電子のクーロン力が伝わる速度より速く動く必要がある)
速度が無限大ということは、消えた瞬間に別の場所に現れる、いわゆる瞬間移動である。
1つの電子は現れては消えるを繰り返していて、その移動速度が無限大なら、電子の数も無限大にすることが可能である。
(電子の数は、必ずしも無限大である必要はないが、ここでは無限大とした)
もし、電子の数が無限大だとすると・・・。
ちょっと待てよ。
電子の数が無限大なら、電荷も無限大になってしまうのではないか。
いや、ご安心。
電子が現れている時間を短くすればいいんだよ。
1/1000秒
1/10000000秒
もっと、もっと、短く!!
あれーッ。ついに0(ゼロ)になっちゃった。
出現時間が0(ゼロ)ということは、電子は現れていないともいえる。
でも、そうしないと帳尻が合わない。
出現時間0(ゼロ)の電子がある領域に無数にひしめき合っている。これが私が頭の中に描いている波の状態にある電子のイメージである。
式で書くと(たいした式ではないが)
0(ゼロ) * ∞(無限大) = 1粒の電子
左辺が波動状態にある電子で、右辺は粒子状の電子である。
電子雲という言葉があるが、波動状態にある電子は、まさに雲の塊のような状態であり、この状態をうまく言い表した言葉であると思う。
もし、波動状態の電子が見えたら、雲のように見えるであろう。
いや違うかな。
出現時間が0(ゼロ)だったら、見えないのかな?
雲状の電子は、粒子状の電子と決定的な違いが2つある。
1つは、粒子状の電子より、はるかに大きいことである。
このことは、2つのスリットの間隔が電子雲の直径より狭ければ、電子雲は2つのスリットを同時に通り抜けられることを意味する。
(もしかしたら、大きな電荷を持った粒子ほど。雲の直径は大きいのかも知れない。だってお互いに反発しますからね。)
2つ目は、元は1つの電子でありながら、電子雲の状態では無数の電子の集団のように振舞う。(干渉する)
プロ野球の球場の観客がウェーブするのを見たことがあると思うが、1人ではウェーブはできない。大勢の人が集まってはじめてきれいなウェーブになるのである。
電子も同じである。無数の電子の集合体だからこそ、波(波動)の性質をもつのである。
電子銃から発射された1粒の電子は、超光速ランダム・ホッピング運動によって、あたかも無数の電子の集団のように振る舞い、電子は2つの集団に分かれて、2つのスリットを同時に通過する。
2つのスリット通過後、分かれていた2つの電子の集団は再び合体する。このときに2つの電子の集団がぶつかることで干渉が起きる。
下の図では、電子の数の多いところと少ないところのムラが発生したように描いているが、もしかしたら、電子の集団の形そのものが3段腹のたるんだ肉のようにデコボコした形になっているのかも知れない。
いづれにしても、この発生した電子の数のアンバランスが波となり振動しながら飛んでいき、スクリーンに衝突して、どこか1ヶ所にその痕跡を残す。電子の数の多いところほどスクリーンに痕跡を残す確率が高いことになる。
では、波動状態の電子は、いつ粒子状になるのであろうか?
それは、ずばり「見られたとき」ということになっている。
ここで「見る」とは、「観測する」ということであり、量子力学では、波動状態の電子は観測した瞬間に粒子になるとされている。
見られてないときは波で、見られていると粒子になるのだ。
このことに関して、面白い実験結果があるので紹介しておく。
2重スリット実験の1つなのだが、2つのスリットに電子を検出するための検出器を設置すると、電子は2つのスリットを同時に通過している筈なのに、どちらかのスリットでしか検出されないだけでなく、この実験を繰り返すとスクリーンに出来るはずの縞模様が出来なくなってしまった。と、ここまでは普通の2重スリット実験の結果である。
面白いのは、ここからだ。
スクリーンに縞模様が出来なく原因は、検出器が発した光が電子の軌道に影響を与えてしまったのだと考えられた。
そこで、電子の軌道にほとんど影響を与えないマイクロ波電子検出器で同じ実験を行ってみた。ところがやはり縞模様は出来なかったのである。
そうなると、電子は、検出器の影響を受けたのではなく、「観測するという行為」の影響を受けたのである。
信じられないかも知れないが、これが現代量子論の解釈である。
しかし、その解釈は間違っていると思う。
それでは、「1粒の電子は、意思を持っている。」あるいは、「人間は神である。」
ということになってしまいそうである。
私の解釈を説明する前に、2つの仮説が必要である。
仮説の1つ目は、”「情報」は光の速度を超えられない。”である。
特に証拠はないが、光の速度を超えて情報伝達できたら未来のことがわかり、因果律も崩壊してしまうから、「情報は光の速度を超えられない」は大宇宙の絶対法則であるとした。(電子などの素粒子もこの法則に従う)
仮説の2つ目は、「情報」とは「変化」である。
これはわかりにくいかも知れない。
電波でも音でもいいのだが、一定の信号を受信し続けているときに。そこに「情報」は存在するだろうか?
答えはノーである。
信号に「変化」があって初めて「情報」になるのである。
話をもとに戻そう。
波動状態にある電子は、超光速ランダム・ホッピングしているとしたが、このランダム・ホッピング運動は情報を伝達しない。
電子は情報を持たないからこそ、雲の中で光の速度を超えた瞬間移動ができるのである。
(注意:電子銃から発射された電子が情報を持っていないというわけではない。あくまでも雲の中の電子の話である)
捕捉
ちょっとわかりにくいと思うので捕捉する。
電子を伝書バトに例えて説明する。
普通は、伝書バトにメッセージを持たせて、情報を伝えるのだが、メッセージを持っていなくても、伝書バト自身が立派な情報である。
今、A地点にいる伝書バトをB地点に向けて放つとしよう。
もし、伝書バトがB地点に着いたら、情報が伝わったことになる。
ところが、この伝書バトは気まぐれだったとすると、A地点を出発したら、B地点に行くかも知れないし、C地点やD地点に行くかもしれないのである。
こんな伝書バトは情報を伝えられない。
つまり、「行き先を制御できず、ランダムに動き回る物は情報伝達能力はない」と言いたかったのです。
ちなみに、伝書バトの速度を無限大にしたら、A地点、B地点、C地点・・・・・といたるところに伝書バトが同時に存在することになる。
2012/10/27 追記
では、先のマイクロ波検出器を使った2重スリット実験で、波動状態にある電子にマイクロ波が照射された場合はどうだろう。
そのマイクロ波のエネルギーは非常に弱いもので、電子銃から打ち出された電子の軌道を変化させる力はほとんどない。
ところが、いくらエネルギーが弱いとはいえ、電子はエネルギーを受け取り「変化」する。私は専門家ではないので、電子の持つ物理量の何が変わるのかはわからない(励起状態かな)、しかし、エネルギーを受け取った以上何かが変化したはずである。
そう「変化」である。
どんなに小さな変化であってもいい。「変化」したことには変わりないのだ。
「変化」は「情報」である。
どんなに小さな「変化」であっても「情報」なのである。
つまり、電子は、観測されたときだけ「情報」という重荷を背負ってしまったのである。
「情報」を持った電子は、超光速ランダム・ホッピング運動ができなくなり、粒子として姿を現したのである。
検出器が発するエネルギーの強い、弱いの問題ではなく、「観測が、電子に変化を与えたのだ」と考えれば、マイクロ波検出器を使った2重スリット実験の結果も、難なく説明できる。
人間が見ていなくても、電子そのものが電磁波を放射するなどして、変化すれば、その瞬間は粒子になっている筈である。
めでたし、めでたし。
では、2重スリット実験の不思議について詳しく見ていこう。
電子銃から発射された1つの電子は、2つのスリットを(2つのスリットのどちらか、又は両方のスリットを同時に)通過してスクリーン上に1つの痕跡を残す。
この実験を繰り返すとスクリーン上の痕跡はやがて縞模様を描く。
これは、紛れもない事実である。
では、スリット通過中電子はどうなっているのか?
量子論の教科書の説明は以下である。
見られていないときの電子は、確率波という波の状態になり、2つのスリットを同時通過した。
確率波とは、1つの電子が存在しうる場所に、その場所に応じた存在確率で同時に存在している状態を表している。
(この「同時に存在」というのがクセモノである。)
つまり、見られていないときの、スリット通過中の電子は、AのスリットとBのスリット両方に存在していたことになる。
では、2つのスリットに電子の検出器を設置したらどうなるか?
j結果は、どちらか1方のスリットでしか電子は検出されないのである。
2つのスリットを同時に通過したのなら、2つのスリットの両方で電子が検出されてもよさそうなのだが・・・・。
この現象の解釈だが、例えばAのスリットで電子が検出された場合は、Bのスリットにいる電子にその情報が瞬時に伝達され、Bのスリットにいた電子を消し去ってしまった。
なんか、強引ですよね。
でも、これが一般的な解釈なんです。
さて、私が描いている波動状態の電子モデルの場合、スリット通過中の電子はどうなっているのかを説明しよう。
電子銃から発射された電子は、超光速ランダム・ホッピング運動をしていて波動状態になっている。
スリットに達した電子は、A、Bのスリット間に関してだけ見れば、すごい速度でA、Bのスリット間を往復していることになる。
すごい速度とは速度無限大の瞬間移動なので、電子は、AのスリットとBのスリット同時に存在しているのと等価である。
この時に、Aのスリットで電子が検出されたとしよう。
するとどうなるか?
電子が検出された。
↓
電子が変化した。(電子が情報を持った)
↓
超光速ランダム・ホッピング運動が出来なくなり、電子が粒子として姿を現す。
↓
Bのスリットに瞬間移動できなくなる。(Bのスリットにいた電子が消えたように見える)
つまり、Bのスリットにいた電子を消し去ったのではなく、Bのスリットに行けなくなっただけである。
そのように考えると、2つのスリットで電子が同時に検出されることは絶対にないのである。(むしろ、あたりまえ〜〜ですよね)
ただ、A、Bどちらのスリットで検出されるかは、予測不可能(検出される確率は、どちらのスリットも1/2)。強いて言えば、先に検出された側のスリットということになる。
Bのスリットにいた電子だけでなく、周囲の電子全てを消し去ったように見えるわけだ。
なんとなく、周囲の電子が消えるのに少し時間がかかるような気がするが、電子が速度無限大で飛びまわっていたとすれば、電子が粒子になるのと、周囲の電子が消える(雲が消える)のは、タイムラグなしで、瞬時に起きることになる。
量子力学でいうところの「波動関数の収縮」である。
あーー、すっきりした。(自分だけかな)
すっきりしたところで、もう1つ興味深い実験結果がある。
謎解きのヒントになりそうな実験である。
今まで電子について述べてきたが、フラーレンという炭素分子でも電子の2重スリット実験の結果と同じようにスクリーンに縞模様が現れたのである。
そして、フラーレンの温度を上げていくとスクリーンに現れる縞模様は薄くなり、さらに高温にすると最後には縞模様は消え、濃淡のない灰色になってしまったのだ。
この話を聞いたとき、ちょっと疑問に思ったことがある。
それは、電子の場合、電荷を持っているので、電気的に反発し干渉するが、フラーレンは電荷を持っていないので、干渉するのだろうかということ。
ここからは、推測になるのだが、フラーレンを打ち出す装置は、フラーレンを帯電させた後、打ち出す方向に電界をかけてフラーレンを飛ばしたのではないだろうか。
だとすれば、フラーレンは電荷を持っていたことになるので、電気的に反発し干渉したと考えれば納得がいく。
フラーレン2重スリット実験で、フラーレンの温度に影響を受けたことは、大変興味深いことである。
この現象についての説明は、今のところ2つ考えている。
1つ目は、単純にフラーレンの温度が上がることで、帯電していた電荷が抜けやすくなってしまったという説。(ただ、温度が上がると電荷が抜けやすくなるという知見はいまのところもっていない。)
2つ目は、温度が高くなればなるほど、室温との差が大きくなり、フラーレンは冷えやすくなる。
よって、打ち出されたフラーレンは「変化」する回数が多くなる。
つまり、打ち出されてからスクリーンに到達するまでの間、波動状態よりも粒子状態でいる時間が長くなり、干渉性が弱くなったという説。
いづれにしても、電子にくらべて途方もなく大きい炭素分子でも、2重スリット実験でスクリーンに縞模様ができたというこの実験の意味は大きい。
つまり、素粒子だけではなく、分子も波の性質を持つことが実証されたのである。
そうなると、分子の集まりである人間も波の性質を持っているのであろうか?
人間が波の性質を持っていないとすると、ミクロとマクロの境界はどこにあるのだろうか?
この問題を考えるために、フラーレンをさらにスケールアップして、パチンコ玉での2重スリット実験を考えてみよう。
量子力学の専門家は、スリットを通過する瞬間を誰も見ていなければ、パチンコ玉は両方のスリットを同時に通過したと主張するであろう。
でも、それは間違い。
その理由は、そもそもパチンコ玉くらい大きな物体だと構成する原子の数もすごく多い。その中の原子1つでも何らかの「変化」があったら、パチンコ玉は波の状態にならないからである。
仮に、パチンコ玉が波の状態になったとしても、ランダム・ホッピングの移動距離は、パチンコ玉の大きさに比べたら非常に小さいため、2つのスリット同時通過は不可能である。(勿論、人体はもっと不可能)
まあ、大きさから考えて、フラーレンくらいが限界ではないだろうか。
「神はサイコロを振らない」
これは、アインシュタインが残した有名な言葉である。
アインシュタインは、確率的な振る舞いをする量子力学の考え方を受け入れられなかったようである。
確率が支配する世界に関して、自分は、あまり違和感はなく素直に受け入れられる。
なぜなら、素粒子のランダムな動きは確率でしか予測できないからだ。
これとは別に、アインシュタインは、「月は、誰も見ていない時にふらふらどこかにいっていると思うかい?」と疑問を投げかけている。
ミクロの物質の集まりである月も、量子論の考え方を適用すると、誰にも見られていない時には、波となっており、居場所は特定されないことになってしまう。
しかし、パチンコ玉のところで説明したが、大きな物体は波の状態にはなりにくい。まして、月のような巨大な物体なら、なおさらである。
仮に月が波動状態にあったとしても、その移動距離はせいぜいマイクロメーターのオーダーである。
だから、誰も見てなくても、月はそこにある。絶対にある。
マクロの世界においては、私は、アインシュタインの考え方を支持する。
今回は、電子が光より速く移動(ホッピング)すると何故、干渉するのか。
また、何故、電子が光より速く移動出来るのかについての詳しい説明は省略した。
詳しい説明は、シュレーディンガーの猫のところを見て欲しい。
【サイト紹介】
ちょっとわかりにくい説明や、説明不足のところもあったかと思います。
2重スリット実験やシュレーディンガーの猫については、下記のサイトがお勧めです。
「量子力学メニュー」の中の「波動と粒子の2重性」から始まります。
下手な専門書より、ずっとわかりやすく、面白いです。
http://www.h5.dion.ne.jp/~terun/saiFrame.html
2012/08/26