3.未来は決まっているのか?

3.5 

その方法とは、電車は止まっていてもいい。
その代わりにC君に左から右方向に走ってもらえばいい。
それでも全く同じことが起きるのである。
それが相対性理論たる所以だ。



ところで、前ページの未来がわかるというカラクリにもう1つ問題がある。
お分かりだろうか?
C君経由でB君からA君に情報を伝達するときに、通常は電波や光通信を使うことになるが、光と電波は同じものなので、伝達速度は光速である。だから、情報がC君経由でA君に届いたときには、もう未来の情報ではなくなっている。光より速い情報伝達手段があれば、未来がわかる可能性は残されるが、今のところそのようなもの見つかっていない。

「なーんだ、期待してたのに」なんて言わないで下さい。
今回の命題は「未来は決まっているか」なんですから。

では、C君に左から右方向に走ってもらうところまで話を戻そう。
もう、見えるかどうかなんてどうでもいい。観測できなくてもいい。
とにかく、光速近い速度で左から右方向に走っているC君にとっては、B君が米国同時多発テロ事件に遭遇してから、1日たってA君が米国同時多発テロ事件に遭遇するのだ。

このような状態を作り出すためには、どうしてもC君に光速近い速度で走ってもらう必要がある。
技術的に困難を極めたが、なんとかC君を光速近い速度で走らせることに成功したので報告する。

まず、観測者C君とは何者かを考えてみよう。
人間であれば、問題ない。
エイリアンでもいいよね。
それじゃ、知的生命体というのはどう?
なるほど、いい言葉だ。
ところで、人類は、いつから知的生命体になったの?
縄文人は、知的生命体じゃないの?
違うとは言えない、そんなこと言ったら、縄文人から差別問題で訴えられてしまう。
なら、ネアンデルタール人やアウストラロピテクスでもいいよね。
それにもう、情報を伝える必要はないんだ。ただ速く走ってくれればいい。
だいたい、観測者が原人の時と猿人の時とで、物理学の法則が変わるなんて変だ。

待てよ。
そうなると、C君は犬や猫でもいい。
そうだ、生物ならなんでもいいんだ。
ゴキブリ、ミジンコ、アメーバ、バクテリア・・・・・・。

待てよ。
生き物じゃなくてもいいんじゃない?
ただ、存在さえしていれば。石ころだって構わない。
この宇宙の遥か彼方で、地球に対して、光速に近い速度で飛んでいる隕石。
これなら、実際にありそうだ。

待てよ。
実際に隕石なんてなくてもいいんじゃない?
地球に対して、光速に近い速度で飛んでいる隕石を仮想すれば。

ついに成功しました。我々に対して光速に近い速度で走るC君を作り出すことに。



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