DCブラシ付きモーターデータ

                                                        2020/08/15



 模型によく使われるDCブラシ付きモーターのデータを集めてみました。
全く同じ外見のモーターでも巻線の太さ、巻数の違いで異なる特性のモーターになるのは理解できますが、全く同じ品番のモーターでもデータが異なる場合がありました。
これは、定格電圧の違い、生産国による違い、改良、測定時のバラツキなどが考えられます。
中華製モーターのなかには、本物と同じ品番を付けている場合もあるので注意が必要です。
データが公表されていない部分については、実測や計算で求めたものを記載しています。(実測では、モーター個々のバラツキがありますので注意)
無負荷、及びストールの回転数、電流は特に指定がない場合は、定格電圧における値です。
データに間違いがあれば、ご指摘をお願いします。


主な用途   品名 (品番)   イメージ   メーカー    使用電圧(V)    定格電圧(V)   適正負荷時(@定格電圧)     無負荷  ストール   外形 (mm)   重量(g)   シャフト径(mm)   ロータ線径(mm)  ロータターン数(回)   ブラシ材質  進角   税抜参考価格(円)    備考
 回転数(rpm)   トルク(gfcm)   電流(A)   出力(W)  回転数(rpm)   無負荷電流(A)    トルク
(gfcm)
 電流
(A)
 ミニ四駆             トルクチューン2モーター
FA-130SA-3345
(2019/07以降)
   SMC  2.4〜3.0      12300〜14700    16.3〜20.4     1.7〜2.0   2.06〜3.09    0.3(@3V)      20.1*15.1*25.0  17    2.0  0.33  45  金属  -  420  
 レブチューン2モーター
FA-130RA-2955
(2019/07以降)
   SMC   2.4〜3.0      13400〜15200  12.2〜15.3  1.6〜2.0   1.68〜2.39    0.4(@3V)      20.1*15.1*25.0  17    2.0    0.29  55  金属  -  420  
 アトミックチューン2モーター
FA-130SA-3144
(2019/07以降)
   SMC  2.4〜3.0      12700〜14900  15.3〜18.4   1.8〜2.2  2.00〜2.82    0.3(@3V)      20.1*15.1*25.0  17  2.0    0.31  44  金属  -  420  
 ライトダッシュモーター
FA-130SA-3141
(2019/07以降)
   SMC   2.4〜3.0      14600〜17800  13.3〜19.4    2.4〜3.0  2.00〜3.55    0.4(@3V)      20.1*15.1*25.0  17    2.0    0.31  41  金属  -  440  
 ウルトラダッシュモーター
FC-130SA-3725
(2019/07以降)
   マブチ  2.4〜3.0      24000〜27500   14.3〜19.4  4.0〜5.0  3.53〜5.49    1.3(@3V)      20.1*15.1*25.0  17.5  2.0    0.37  25  銀カーボン  -  680  
 スプリントダッシュモーター
FC-130SA-3628
(2019/07以降)
   SMC  2.4〜3.0      20700〜27200  13.3〜18.4    2.8〜3.8  2.83〜5.15    1.0(@3V)      20.1*15.1*25.0  17.5    2.0    0.36  28  カーボン  -  460  
 パワーダッシュモーター
FC-130SA-3630
(2019/07以降)
   SMC  2.4〜3.0      19900〜23600    15.3〜20.4     2.5〜3.3  3.13〜4.95    0.6(@3V)      20.1*15.1*25.0  17.7  2.0    0.36  30  カーボン  -  460  
 ハイパーダッシュ3モーター
FC-130SA-3433
   SMC  2.4〜3.0      17200〜 21200  14.3〜19.4      1.6〜3.0     2.53〜4.23  24000(@3V)  0.6(@3V)      20.1*15.1*25.0  17.0    2.0    0.34  33  銀カーボン  -  460  
 プラズマダッシュモーター
(2019/07以降)
   SGM  2.4〜3.0      25000〜28000  14.3〜 19.4  4.1〜5.2    3.68〜5.59    1.6(@3V)      20.1*15.1*25.0  18.0    2.0      27  カーボン  -  880  
 模型工作         FA-130RA-2270     マブチ   1.5〜 3.0  1.5  6500   4.0  0.5  0.27  8600        20.1*15.1*25.0  18  2.0  0.22  70  金属  -  150〜300  
   マブチ  1.5〜 3.0  1.5  6990  6.0  0.66  0.43  9100  0.2  26  2.20  20.1*15.1*25.0  17    0.22  70  金属  -    ・マブチHPより
 RE-140RA-2270     マブチ  1.5〜 3.0  1.5  4700   5.0  0.56   0.24  7200         Φ=21.0
 L=25
 21  2.0  0.22  70  金属  -  154〜198  
   マブチ  1.5〜 3.0  1.5  6150  6.7  0.66  0.42  8100  0.21  28  2.1  Φ=21.0
 L=25
 19    0.22  70  金属  -    ・マブチHPより
 RE-260RA-2295     マブチ  1.5〜 3.0  3.0  7500  10.0  0.7  0.77  10900      Φ=23.8
 L=26.9
 30  2.0  0.22  95  金属  -  160〜 340  
   マブチ  1.5〜 4.5  3.0  7610  13.3  0.64  1.04  9400  0.15  70  2.7  Φ=23.8
 L=26.9
 28  2.0  0.22  95  金属  -    ・マブチHPより
 RE-280RA-2865     マブチ  1.5〜 3.0  3.0  5800 15.0   0.65  0.90  8700        Φ=24.2
 L=30.5
 44  2.0  0.28  65  金属  -  252〜390  
   マブチ  1.5〜 3.0  3.0  7770  20.2  0.87  1.61  9200  0.16  129  4.7  Φ=24.2
 L=30.5
 42  2.0  0.28  65  金属  -    ・マブチHPより
 RC                        FK-180SH-17140    マブチ  6.0〜 12.0  6.0  6390  20.8  0.39  1.37  7800  0.085  115  1.75  20.4*15.4*32.1  32  2.0  0.17  140  カーボン  ○  1000  ・CCW
・マブチHPより
 FK-180SH-14180    マブチ  5.0〜 12.0  12.0  9980  23.6  0.34  2.41  12000  0.07  140  1.7  20.4*15.4*32.1  32  2.0  0.14  180  カーボン  ○    ・CCW
 RC-280SA-2865    マブチ  4.5〜 9.0  6.0  11910  45.5  1.60  5.56  14000  0.28  305  9.10  Φ=24.2
 L=30.5
 42  2.0  0.28  65  カーボン  -    ・マブチHPより
 RC-280RA-2865    マブチ  4.5〜 9.0  4.5  11350  29.8  1.36  3.47  13600  0.27  180  6.90  Φ=24.2
 L=30.5
 42  2.0  0.28  65  カーボン      ・マブチHPより
 RC-280SA-2485    マブチ  4.5〜 9.6  6.0  9130  37.8  0.99  3.54  10800  0.18  245  5.40  Φ=24.2
 L=30.5
 42  2.0  0.24  85  カーボン  -    ・マブチHPより
 RC-280RA-2485    マブチ  4.5〜 8.4  7.2  14260  33.3  1.18  4.87  16800  0.21  220  6.60  Φ=24.2
 L=30.5
 42  2.0  0.24  85  カーボン      ・マブチHPより
 RC-280SA-20120    マブチ  4.5 〜12.0  12.0  13320  47.7  0.92  6.52  15500  0.15  339  5.60  Φ=24.2
 L=30.5
 42  2.0  0.20  120  カーボン  -    ・マブチHPより
 RC-280RA-20120    マブチ  4.5〜 9.0  6.0  8210  23.0  0.58  1.94  9900  0.12  135  2.82  Φ=24.2
 L=30.5
 42  2.0  0.20  120  カーボン      ・マブチHPより
 RS-380PH-4045     マブチ  1.5 〜9.6  7.2   13400   100   2.9   27.8  15100  0.7      Φ=27.7
 L=37.8
 75  2.3  0.40  45  カーボン  -  900  
   マブチ  3.0〜 12  6.0  10630  118  3.17  12.9  12500  0.56  790  18.0  Φ=29.2
 L=37.8
 80  2.3  0.40  45  カーボン   ○    ・補助ヨーク付き
 ・CCW
・マブチHPより
 OP.1393 380
スポーツチューン
   タミヤ  6.6〜 7.2  7.2 129  24900  Φ=27.7
 L=37.8
2.3 カーボン  800  
 Speed 400-3320    グラウプナー  1.2〜 6.0  4.8    100  7.0    22000  1.0    40  Φ=27.5
 L=38
 73  2.3      カーボン  -  910  ・効率66%
 RS-540SH-6527     マブチ  4.5〜 9.6  7.2  14400  200  6.1  29.6  15800        Φ=35.8
 L=50
   3.17
(Dカット)
 0.65  27  カーボン  ○  1200  ・逆進角?
   マブチ  4.8〜 9.6  9.6  20040  316  9.55  64.9  23400  1.6  2202  57.0  Φ=35.8
 L=50
 160  3.17
(Dカット)
 0.65  27  カーボン  ○    ・逆進角?
・マブチHPより
 OP.68 RS-540
スポーツチューン
   タミヤ  6.0〜 8.4  7.2  18300  350  12  65.9  21000        Φ=35.8
 L=50
   3.17
(Dカット)
   23  カーボン  ○  1500  ・CCW
 OP.1358 RS-540
トルクチューン
   タミヤ  6.6〜 7.2  7.2  16000  306  10  50.4          Φ=35.8
 L=50
   3.17
(Dカット)
   25  カーボン    1469  
 OP-689
540-J
   ジョンソン  7.2〜 8.4  7.2  14500  255  7.9  38.0          Φ=35.8
 L=50
   3.17
(Dカット)
     カーボン    1200  




解説
モーターの特性曲線例を下図に示します。



一見すると複雑なグラフに見えますが、横軸にモーターのトルク、縦軸に回転数、出力、電流、効率のラインが1つのグラフ上に描かれているだけです。
わかりやすいように、定格電圧を7.2V、無負荷回転数を10000rpm、スロール時の電流、トルクをそれぞれ10A、100gf・cmのモータとしました。
 まずは、回転数(水色のライン)に注目してください。
モーターの回転軸に何もつけずに7.2Vの電源を繋ぎますとモーターは勢いよく回り出します。
このときの回転数が無負荷回転数(10000rpm)で、最も回転数が高くなります。
勘違いしやすいのですが、シャフトがギンギンに回っているので、電流消費が大きいように思うかもしれませんが、実は、この状態が最も消費電流が小さい状態になります。
無負荷で回転しているモーターのシャフトを指で摘んでモーターを止めようと指の力を徐々に強めて行きます。
(実際にやると怪我をするかもしれませんので、想像してください)
これは、グラフの横軸(負荷トルク)を、0から100に向かって移動させていることになります。
トルクと聞くと難しく思えますが、負荷を大きくしていったということで、模型飛行機のプロペラで例えれば、プロペラの直径をだんだんと大きくしていったと思ってください。
すると、モーターの回転数(水色)は徐々に下がっていって、最終的にはモーターの回転数は0になってモーター回転は止まります。(プロペラの場合は止まるまではいきませんが)
このようにして強制的にモーターを停止させた時のトルクは最大となり、このモーターでは100gf・cmです。
電流の変化(紫色のライン)を見ますと、無負荷時には小さな値だった電流は、負荷が大きくなるに従ってどんどん大きくなって、ストール時に最大の10Aになります。
注意してほしいのは、これは、7.2Vの電圧をモーターに加え、強制的にモーターの回転を止めたときの話です。
ESC(スピコン)を使ってモーターの回転を下げた場合は、PWM制御等によって見かけ上モーターに加える電圧を下げたことと同じですので、今回の説明とは全く異なりますので、混乱しないでください。
 今度は、出力曲線(赤いライン)に注目してください。
無負荷からだんだんと負荷を大きくしていくと、出力もどんどん大きくなっていきますが、ちょうど最大トルクの1/2の50gf・cmのピーク(グラフではA)を堺に出力は低下していきます。
モーターのトルクを測定することは難しいですが、回転数や電流を測定することで、モーターにどれくらいのトルク(負荷)をかけているのか推定できます。
電流で見れば、(無負荷時の電流が0ではありませんので、少しズレますが)、ざっくり言って、ストール時の電流の1/2(このモーターでは5A)のところ、
回転数で見れば、無負荷回転数の1/2(このモーターでは5000rpm)のところでモーターは最大出力を出していることなります。
 今度は、効率曲線(緑色ライン)に注目してください。
同様に無負荷から徐々に負荷を大きくしていくと、負荷トルク20gf・cmのところにピークがあるのがわかるかと思います。(グラフでは@)
模型用小型ブラシモーターでは、最高効率は凡そ50〜70%程度です。
ここでは最大トルク(ストール時のトルク)の約20%のところを最高効率点としました。
この20%という値はモーターによっても多少上下しますが、、最高効率点を求める上で1つの目安にはなるかと思います。
最大トルクの20%ということは、回転数で見ると無負荷回転数から20%ダウンの80%となり、このモーターでは8000rpmです。
電流は、ストール電流10Aとして、無負荷電流を無視すれば、10Aの20%の2A、無負荷電流を考慮すれば、10Aの25%の2.5Aといったところでしょうか。
実際の模型でのモーターの使われ方を見てみると、最高効率の@から最大出力のAの間、グラフではB領域で使われていることが多いようです。
モーターの立場から見ますと、なるべく最高効率@付近で使うのが理想で、モータースペックに記載してある適正負荷というのは、最高効率付近のデータになります。
しかし、もっとパワーが欲しくてB領域の中でもAに近づけて使われることもあるようです。
気を付けてほしいのは、A付近は効率が悪いのです。
効率が悪いということは、電気エネルギーが軸出力に変換されなかった残りが熱エネルギーに変換されることを意味します。
つまり、最大出力(A付近)で使用するとモーターの発熱が大きくなり、モーターの寿命にも影響を与えると考えられます。
どのあたりの負荷トルク領域を常用するかは、悩みどころですが、一つ言えることは、間違ってもC領域を常用しないことです。
C領域では、かえってパワーが出なくなってしまいますし、発熱は更に大きくなってしまいます。
(RCカーレースのスタートダッシュ時には、短時間ではありますが、C領域が使われることにはなりますが。)
では、A領域での使用はどうかといいますと、効率はよくありませんが、供給される電力自体が小さく、発熱は小さいので、この領域での使用は特に問題はありません。
 最後に模型用小型DCブラシモーターに限ったことかもしれませんが、無負荷電流の4〜6倍位の電流のところが最大効率付近になる場合が多いようです。
例えば、無負荷電流が0.5Aのモーターの場合、2.0A〜3.0Aの電流で実負荷運転しているなら、まあまあ効率が良い負荷トルク領域を使っていると考えられます。


巻線
 ローター巻線の太さや巻数によって同じ形状のモーターでもその性格は大きく変わってきます。
ロータースペースが限られるため、太い線を巻けば巻数は少なくなるし、たくさん巻きたければ線径は細くなります。
一般論ですが、巻線が細くて巻数の多いモーターは、低消費電流、高トルク型、ローパワーで、巻線が太くて巻数の少ないモーターは、
消費電流が大きく、高回転型、ハイパワーになる傾向があります。


ブラシ材質
 ブラシ材質には、主として金属系とカーボン系に分かれる。
金属系ブラシの方がブラシ部の電気ロスは小さいが、カーボン系の方が耐久性が高い。
ノイズの点ではカーボン系が有利とされ、RC模型ではカーボンブラシが望ましいです。


進角
 模型用小型モーターは、固定マグネットとローターに巻かれた電磁石の反発力で回転します。
連続で回転させるには、マグネットとローターの回転位置に合わせて電磁石(コイル)の通電を切り替えていきます。
その切替え接点部にあるのがブラシです。
ローターに巻かれたコイルは、通電してもすぐに最大の電流が流れるのではなく、最大電流に達するのに少し時間がかかります。
モーターの回転速度が遅い場合は、あまり問題になりませんが、回転が速くなると電流立ち上がりが追いつかなくなってきます。
そこで考え出されたのが、ブラシの位置をずらして、少し早めに通電をしようという進角です。
モーターに進角をつけると消費電流は増えますが、回転数アップが期待できます。
進角付きのモーターでも、逆回転はできますが、逆回転で使用すると回転数が下がるくせに、消費電流が増えるので、あまり良いことはありません。
 個人的な意見ですが、レース用のスペシャルモーターは別として、汎用モーターに進角は付けてほしくないです。
DCブラシモーターは、電源のプラスマイナスを入れ替えると簡単に逆回転させることができますが、進角付きモーターだとこれができなくなってしまいます。
双発機、プッシャー機、戦車などモーターを逆回転させて使いたい模型は多々あります。
進角仕様のモーターは、パワーアップのメリットよりも逆回転使用できないデメリットの方が遥かに大きいように思います。


回転数
 通常1分あたりの回転数で表し、単位はrpmです。


トルク
 回転するときの力強さを表します。
基本単位は、N・m(ニュートン・メートル)です。
模型用モーターの場合は、トルクが小さいので、mN・m(ミリニュートン・メートル)やgf・cm(グラムフォース・センチメートル)が多く使われます。
換算式は、
1gf・cm = 98*10^−6N・m
です。


出力
 出力は、トルクと回転数から求めることができます。
 P = 0.105*98*10^-6*T*N
   = 1.029*10^-5*T*N
 (P(W):出力 、 T(gf・cm):トルク 、 N(rpm):回転数)