7.加速膨張する宇宙


 宇宙の加速膨張について、ふと、妙な考えが浮かんだので、書き留めておくことにする。
2011年のノーベル物理学賞には、ソール・パールマッター博士、ブライアン・シュミット博士、アダム・リース博士が授与された。
宇宙の膨張が加速していることを観測によって確かめた功績が認められたのである。
 宇宙が膨張していることは、皆さんもご存知のことだと思いますが、それまでの議論の的は、この宇宙が重力によって、膨張から収縮に転じるのか、それとも重力を振り切って永遠に膨張し続けるのかということであった。
ところが、遠方の銀河を観測してみると、収縮するどころか宇宙の膨張は加速していたのである。
これは、まさに目からウロコである。
しかし、この発見のおかげで、やや矛盾気味だった宇宙の年齢と銀河の年齢との関係について矛盾が解消されたことも事実である。

 加速膨張について、こんなことをイメージしてみよう。
パチンコ玉を真上に投げてみる。すると、パチンコ玉は初めのうちは勢い良く上空に向かって飛んでいくが、その速度はだんだんと遅くなり、やがて速度ゼロになり、その後下方に向かって落ち始め、最後には地面に落下する。
では、今度はもっと速い速度でパチンコ玉を投げてみよう。すると、パチンコ玉は地球の重力を振り切って地球から無限の遠くまで離れていく。最終的なパチンコ玉の速度は一定(等速直線運動)である。
今度は、地球から少し離れたところに巨大な磁石があるとする。先ほどと同じように地球の重力を振り切るくらいの速度でパチンコ玉を投げたとする。パチンコ玉は地球の重力を振り切って等速直線運動に移る。ところが、パチンコ玉が磁石に近づくにつれて、どんどん加速を始める。これは、地球からパチンコ玉を観測すると、初めは減速し、その後一定速度になり、さらに地球から離れるにつれてどんどん加速して遠ざかっていく。
まあ、宇宙の加速膨張のイメージはこんな感じだろうか。
 ところで、遠方の銀河を加速させる力とは、いったい何であろうか。
物質を加速するためには、エネルギーは必要というこで、巷では、我々がまだ知らないダーク・エネルギーなるものの存在が脚光を浴びているようである。

 では、そろそろ、私の考えを述べたいと思う。
まだ、よくわからない現象に対しては、仮説がたくさんあった方が楽しいので、あくまでも、仮説の1つとしての考えである。
その仮説とは、遠方の銀河を加速させている力は、重力ではないかという考えである。
「えーー! 重力ってお互いを引き寄せる力(引力)であって、反発する力(斥力)ではないよ。」という反論があると思いますので、もう少し具体的に述べると、東の夜空の方向に観測される遠方の銀河と、西の夜空の方向に観測される遠方の銀河は重力によって互いに引っ張られて加速しているということです。
図で書くと下図のようになる。


地球から見て、銀河Aと銀河Bが比較的に近い距離にある場合
宇宙の膨張に伴って銀河Aと銀河Bは地球から離れてはいくが、銀河Aと銀河Bはお互いに重力(引力)が働いている。


地球から見て、銀河Aと銀河Bが遠い距離にある場合、宇宙の膨張に伴って銀河Aと銀河Bは地球から離れて行く。
銀河Aと銀河Bは、地球側からの重力(引力)と地球から見て無限遠のかなた側からの重力(引力)がつりあっている。
つまり、銀河Aと銀河Bが地球から遠ざかる速度は、宇宙の膨張によるもののみで、ハッブルの法則が成り立つ。


地球から見て、銀河Aと銀河Bがさらに遠い距離にある場合
宇宙の膨張に伴って銀河Aと銀河Bは地球から離れて行くが、地球から見て無限遠のかなた側からの重力(引力)が加わるため、地球から見ると、遠ざかる速度は加速される。

 まあ、単なる思いつきなのだが、全く根拠が無いわけでもない。
こんな話を聞いたことはないだろうか。
あなたが望遠鏡を持って、宇宙空間にぽっかりと浮いていたとしよう。そうして、望遠鏡で宇宙の”果て”を見ている。
その時、望遠鏡の倍率をどんどん上げていくと、なんとそこに見えたのは、自分の後頭部だった。

似たような別の話。
私が、小学生だったころ、よく友達と議論を交わしたことがある。
いったい、宇宙はどこまであるのだろう。
友達の一人は言った。「ものには絶対に端がある。だから、宇宙は無限じゃなくて絶対に”果て”がある。」
すると、もう1人の友達が言う。
「でも、その ”果て”を超えたら、また宇宙は広がっているんじゃないの。だから、宇宙の果てなんてないよ。」
当時の自分は、どちらが正しいのかわからなかった。
それから、何年か経った頃、この議論の矛盾って、今自分がいる地上でも同じこと言えるんじゃないかって気が付いた。
もし、自分が地球が丸いということを知らなくて地面が平ら(2次元)だと思っていたら、まっすぐに歩いていくとどこまでいけるのだろうか?
事実、昔の人は、この世界が平らな板状で、大海の果てには大きな滝があって、すべてのものが飲み込まれてしまう、と信じられていた時代もあった。しかし、この世界は、地球という球体(3次元)であることがわかってしまえば、世界の果てなんて言うこと自体がナンセンスなことだと気づいてしまう。
つまり、東に向かってどこまでも進んでいくと、やがて西から現れて元の場所に戻ってしまう。
宇宙だって同じこと。
つまり、縦、横、高さの3次元空間だと思っていたから、矛盾が生じたわけだ。現在では、この世界は3次元ではなく、時間軸を含めた4次元であることがわかっている。4次元の世界って、自分にはイメージできないが、そのように考えれば矛盾はなくなる。

他にも似たようなことがある。
皆さんは、スミスチャートってご存知だろうか。
これは、高周波回路を設計するときに使う、便利なグラフである。



自分には、このグラフが宇宙を表現しているように見えてしかたがない。
このグラフは、複素平面を表しているのだが、複素平面は直行座標で描くのが普通である。ところが、スミスチャートは、虚軸を湾曲させることで、ゼロから無限までの領域を紙の上に描くことが出来る。直行座標系なら、「X=∞(無限)のところに点を書け」なんて言われたって、紙の大きさが有限なので、そんなことは不可能である。ところがスミスチャートでは、無限のところに点を書くことが可能なのである。このチャートを使っていて非常に興味深いことは、高周波回路を設計するときに伝送線路(高周波を伝える線路)はその長さに応じてプラス∞からマイナス∞へと何のストレスも無く通過することである。こんなグラフを眺めながら、プラス∞とマイナス∞は繋がっているんだと実感する。

ちょっと話が難しい方向に進んでしまったが、要は、宇宙空間において、右手方向の”果て”と左手方向の”果て”が繋がっていて、同じように前方向の”果”てと後ろ方向の”果”ても繋がっていて、真上方向の果てと真下方向の”果て”も繋がっているということを言いたかったのである。
地球から見て、右方向と左方向に見える2つの銀河は、宇宙の”果て”に向かってお互いに近づいているのかもしれない。、

こんなことを考えていると、いつも思い出す古い歌がある。
アン・ルイスの歌で、グッド・バイ・マイ・ラブ。
男女の別れを綴った歌だが、歌詞の中にこんな1フレーズがある
「あなたは右に、私は左に、振り〜向いたら〜負け〜よ♪」
右と左に分かれていった男女は、無限のかなたで再会する。
なんか、宇宙のロマンを感じるなぁー。

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