11.遅延選択実験の考察

                                                                2023/09/11

 今まで、量子について考察してきたが、新たな解釈を考えついたのでそれについて述べたいと思います。(あくまでも個人的な考察です)
以前に述べた過去の考察と異なる部分もあるし、繰り返しになるところもあります。

 みなさんは、遅延選択実験をご存じだろうか。
私も最近知ったのだが、とても不思議で興味深い実験である。
ググるとたくさん見つかりますが、参考までに動画サイトを紹介しておきます。

https://youtu.be/uQyOyxr92G0?t=1571

https://www.youtube.com/watch?v=w7DnzcQrDVc&t=7s


とりあえず、この実験について簡単に説明しておきます。(下図参照)


 実験装置は、レーザー光発射装置、BS1(ハーフミラー)、BS2(ハーフミラー)、ミラー1、ミラー2、検出器1、検出器2で構成されています。
さらに、光の波がルートAとルートBを通ってBS2に到達したときに検出器1に行く方は強め合い、検出器2に行く方は打ち消しあうように距離が調整してあります。
 まず、レーザー光発射装置から光子を1つBS1に向けて発射します。
光子はBS1によって、ルートAとルートBの2つの波に分かれて進み、それぞれミラー1とミラー2で反射され、BS2に達します。
すると、2方向からきた2つの波が合わさり波の干渉が起こり、検出器1でのみ100%検出されます。これは、検出器2の方に向かう波は打ち消しあうように距離が調整してあるからです。

 次に、BS2を取り去って、同じ実験を行います。


レーザー光発射装置から発射された1つの光子は1/2の確率でBS1を透過または反射することになります。
光子は、粒子としてルートA又はルートBを通り、それぞれミラー1とミラー2で反射され、検出器1又は検出器2で検出されます。その時の検出確率はともに50%です。
 つまり、BS2がある場合は、波としてルートA、ルートBに2方向に分かれて進み、BS2がない場合は、粒子としてルートA又はルートBのどちらか一方を進むのである。

 まあ、ここまではなんとか納得できるが、問題はこの後です。
 BS2を挿入して実験を開始した場合、光子はBS1を透過(反射)した直後は波となってルートAとルートBに分かれて進んでいると考えられるが、
2つのルートに分かれた直後にBS2を取り去ると、あたかも最初からBS2は存在していなかったかのように検出器1と検出器2でそれぞれ50%の確率で観測される。
 逆にBS2を初めから取り去った状態で実験を開始した場合、光子はBS1を通過又は反射した直後は粒子となってルートA又はルートBに進んでいると考えられるが、
どちらかのルートに分かれた直後にBS2を挿入すると、あたかも最初からBS2が存在していたかのように検出器1でのみ100%検出されるのである。

 本当に不思議な現象である。
 まるで光子(量子)に意思があり、「そんなフェイントには騙されないぞ」と人間の行動をあざ笑っているかのようにさえ思えるのである。
 この実験結果について、一般的には、「未来が過去を改変した」と解釈されているようである。
そこで疑問。
過去って変えられるのか?
たとえ量子といえども、過去を変えるなんてことを許すわけにはいかない。(自論)
もしかして、量子には「未来予知能力がある」のではないか。
そんな馬鹿な・・・・。
では、こんな考えはどうでしょうか。
「未来が過去を改変したのではなく、もともと未来は決まっていて、量子はその決まった未来のレールに沿った振る舞いをしているだけではないか」
未来はすでに決まっている」という考え方は、運命論とかアカシックレコードなど特に目新しい考え方ではないけれど、にわかには受け入れがたい説ではあります。
ただ、そのように考えると、量子の奇妙な振る舞いを簡単に説明ができるように思えたのです。
未来はすでに決まっている」というその根拠については、後述することにするが、「未来の出来事はすでに起きていた」と言う方が近いかもしれない。
(ちなみに、この世界で起きる出来事はすべて物理現象であり、物理現象は予測ができるから「未来は決まっている」という考え方ではありません。念のため。)

 今、あなたは、ガラスのコップを持っているとする。
そのコップをおもいっきり床に叩きつけたら、コップが割れました。
コップを床に叩きつけるという行動を起こしたことで、その結果としてコップが割れたのである。
もし、コップを割るという行動をしなかったらコップは割れない。
現在の行動が未来を決めるのであって、だから「未来は決まっていない」という反論もあるであろう。
しかし、コップを床に叩きつけようと思った意思も含めて「未来は決まっている」ということならどうだろうか。

 映画鑑賞している自分をイメージしていただきたい。
映画の中で、主人公の生死はコイントスで決められるとする。
コインの表が出れば釈放、裏が出れば死刑。
映画の世界に没入している時に、この後の展開はどうなるのだろうとハラハラドキドキしながら映画を観ている。
コイントスした直後、コインは表がでるか裏がでるかは分からない。
しかし、結果は決まっているよね。
映画のフィルムはすでに存在しているのである。

 冒頭の選択遅延実験においても、BS2を挿入したり、取り去ったりする行為をどんなに気まぐれに行ったとしても映画の記録フィルムだと思えば、当然の結果である。
この世界が改変不可能な1本の映画フィルムのようなものなら、逆再生してみるのも面白い。
時間が未来から過去に流れているという訳ではないが、フィルムは改変出来ないのだから、逆再生しても矛盾はないのだ。
 遅延選択実験で、最初にBS2が挿入してあり、レーザー光発射装置から光子が発射され、BS1にて透過(反射)してルートA、ルートBの2つの波に分かれて進んだ直後に、
BS2を取り去った場合で、光子が検出器2で検出された場合を考えてみよう。
フィルムを逆再生してみると、検出器2から光子が発射される(逆再生だからそのように見える)→光子はミラー2で反射される→BS2が挿入される(光子の振る舞いには影響しない)
→光子はBS1で反射される→光子はレーザー光発射装置に入る
となる。
通常の考え方で順方向の場合、レーザー光発射装置から発射された光子は、BS1にて透過(反射)してルートA、ルートBの2つルートに波として進んだ直後に、
BS2を取り去った瞬間、突然波から粒子になって、ルートA又はルートBのどちらか一方のルートを進むように考えられました。
ところが、逆再生したフィルムを見ると、最初から最後まで光は粒子として振る舞っていたことが理解できるかと思います。
 また別の例だが、「シュレーディンガーの猫」のパラドックスで、観測した瞬間に猫が死んでいたのを確認した場合を逆再生してみよう。
観測者が箱のフタを開ける(閉める)→猫が死ぬ(生き返る)→毒ガスの瓶が割れる(割れた瓶が元に戻る)→ハンマーが振り下ろされる(振り上げられる)
→検知器が放射線を検知(検知前に戻る)→放射性元素の崩壊(崩壊前に戻る)。
ただそれだけである。
残念ながら、半死半生の猫の出番は無いし、世界が分岐する必要もない。
 二重スリット実験なら、電子銃から発射された電子は、途中の経路こそ不定だが、スクリーンのどこに着弾するかは初めから決まっていたことになる。

 自分でも正直言って、「未来の出来事はすでに起きていた」なんて思いたくはない。
10年後の夏の甲子園の決勝戦は、「○○高校対✕✕高校で、△△点差で〇〇高校の勝利」なんてこともすでに決まっているの?
もっと怖いのは、「自分の命日は、すでに決まっている?」のだろうか。
あー怖い怖い!

 とは言え、観測前は、どうでもよくて、観測した瞬間に物事が決定するという「コペンハーゲン解釈」はなんだか投げやりだし、
この世界が無数に分岐していく「多世界解釈」(パラレルワールド)は、SF的には面白いけど、ぶっ飛び過ぎ。
最近では、シミュレーション仮説やホログラフィック宇宙論なんていうのもあるが、なんか都合良すぎで受け入れ難い。
まあ、「未来の出来事はすでに起きていた」というのも1つの説であって、誰もが納得できるもっといい解釈が現れることを切に願うばかりである。

 とりあえず真偽は置いておいて、「未来の出来事はすでに起きていた」という根拠について説明します。
この説明については、アインシュタインの相対性理論に登場していただきます。
相対性理論には、等速直線運動(慣性系)のみに絞った特殊相対性理論と重力まで含めた一般相対性理論があるが、ここでは特殊相対性理論で考えることにする。
相対性理論と聞くと難しく感じるが、特殊相対性理論に絞るなら「光速は誰から見ても一定」ということだけ押さえておけばいい。
具体的には、止まって光速を測定しても、飛行中のロケットから前方に放たれた光をロケットの外から観測した場合でも光速は299792458m/sと計測されるのです。
 さて、これからは思考実験になります。
下図のような実験を考えます。


 電車の1車両の中央に発光器を設置する。(発光器はまだ発光していない)
車両の前方にA君、車両の後方にB君がいる。そうして、その車両を横から望遠鏡で見ているC君(観測者 つまりあなた)がいる。C君は電車からとても遠くにいるとします。
実験装置はこれだけですが、A君、B君は発光器から発せられた光を確認したら手を上げるとします。

 まず、電車が停止してい場合を考えましょう。(下図参照)


 発光器から光が発射されました。
発射された光は、A君、B君同時に到着します。
観測者C君は、A君、B君同時に手をあげるのを観測しました。
ここまでは、誰も異論はないでしょう。

 次が問題です。
今度は電車が右方向に走っている状態で、発光器から光が発射された場合です。(下図参照)
(特殊相対性理論によれば、電車は進行方向に縮むが、今回の説明には不要なので無視する)


 時刻0の時に発光器から光が発射されました。
光は車両の前方と後方に向って進みます。(時刻1)
電車が左方向に動いているために、発光器から発射された光はB君に先に届くので、B君が先に手を上げます。(時刻2)
その後は、光はA君にも達するため、少し遅れてA君が手を上げます。
以上は、観測者C君から見た場合です。
一方、走行中の電車の中ではA君とB君は同時に手を上げているのです。
ちょっと不思議ですが、光速は誰から見ても一定の速度なので、こんな奇妙なことが起きるのです。

 次に、電車の速度をもっともっと速くして同じ実験をやってみましょう。
観測者C君は、すぐにB君が手を上げるを確認しましたが、電車の速度が速いため、光はなかなかA君に到達出来ません。
光がやっとA君に到達できた時には、B君が手をあげてから1時間も経っていました。
つまり、観測者C君から見ると、B君が手をあげてから1時間後にA君が手を上げたのです。
これって、B君が手を上げた瞬間を現在だとすると、A君が手を上げるのは1時間後の未来の出来事になるわけです。

 未来なんて決まっていないと思っている人(ほとんどの人)の意見を代弁すればこうだ。
未来は何が起こるか分からない。例えば、前の例で、B君が手をあげた後、順調に行けば1時間後にA君が手をあげる訳だが、
B君が手を上げた直後にA君が腹痛を起こして倒れこんでしまうことだってあるかも知れない。
不謹慎だが、電車が脱線事故を起こすことだって考えられる。
しかし、不測の事態は起こらない。
何故なら、電車の中では、A君とB君は同時に手を上げているのだから、B君が手を上げた後、絶対に1時間にA君は手を上げる。
つまり、C君から見たら、B君が手を上げてから1時間後のA君の未来は決まっていることになる。
電車の速度にもよるが、B君が手を上げてから、A君が手を上げるのは、10年後の未来にも100年後の未来にもなり得るのです。
以上が、「未来の出来事はすでに起きていた」という根拠である。

 この説明には反論もあるだろう。
「これは、電車がすごい速度で走っている場合の話でしょう。」と
いやいや、電車は止まっていてもいいのです。
電車は止まっていて、C君にすごい速度で電車の進行方向とは逆に走ってもらえばいい。
さらに言えば、C君は仮想的な存在であり、C君なんて現実に存在しなくてもいいのです。
C君の走る速度によって、B君が手を上げた後にA君が手を上げるのがどのくらい後(未来)になるかが変わるし、C君の走る方向によって、A君とB君が手をあげる順序が逆にもなる。
つまり、過去、現在、未来なんて相対的なものでしかなく、見る人の立場によって変わるのである。
しかし、電車の中で起きた事象そのものが変化してしまうことはない。

 ここで1つ補足しておきます。
それは、C君が電車からとても遠くにいるので、B君、A君が手を上げるという事象を確認できるのは、かなり時間が経過した後ということになることです。
これは単に光がC君に届くまでの単純な遅延時間であり、A君とB君が手をあげるという2つの事象自体が変わってしまうことはありません。
プロ野球中継をリアルタイム見た場合と翌朝試合結果をニュースでみた場合で、試合結果が変わってしまうことがないことから分かるかと思います。
(そもそも、リアルタイムで見ている人でも、僅かな遅延は存在しています。)
ただし、この遅延時間は重要と考えられます。
もし瞬時に、A君、B君とC君の間で情報の伝達ができたら、未来を知ることが出来てしまうでしょう。
これは、未来を変えることができてしまうことを意味します。
このような未来改変を防止するために、情報伝達には速度規制が設けられているのではないだろうか。

 長々と書いてきましたが、もしかしたら本当に「未来はすでに存在している」かもです。
映画やドラマで、「過去は変えられないけど、未来は変えられる」というフレーズをよく耳にするが、これは、我々の感覚が作り出した錯覚なのかも知れません。
かつて、「天動説」や「地球平面説」などが信じられていた時代もありましたからね。