1.テレポーテーション

つい最近のことだが、とにかく奇妙な体験をした。こんな体験は初めてだった。
どうにも納得がいかないのだ。下の地図を見てほしい。




買い物をするために徒歩で自宅を出て交差点Aを右折、さらに交差点Bを右折、交差点Cを通過してある店に行った。店までは2kmほどの距離であろうか。ほどなく買い物を済ませて、帰路について交差点Cにさしかかったときに、ここで左折した方が自宅に帰るには近道かもしれないと思い、交差点Cを左折して歩き続けた。しかし、なかなか自宅にたどり着かない。(ちなみに、私はこの地に住み始めてから日が浅く、あまり出歩くこともないため、周辺の地理には疎いのである)
「荷物は重いし、こんなことになるのなら、素直に行きと同じ道を通れば良かった」と後悔しながら歩いたのを覚えている。さらに道なりに歩き続け、ある建物Dの横を通ったことを記憶している。(この時点では、建物Dは、交差点Cと自宅を結ぶ道沿いにあると思っていた)
さらに歩き続け、E建物、F建物を通過したのをはっきり記憶している。
その後どうなったかは、想像できるであろう。とにかく自分がどっちの方角に向かっているのか、どこにいるのか全くわからなくなってしまった。
幸いにも、道路標識を頼りになんとか自宅にたどり着くとこができたが、あたりはすっかり暗闇につつまれていたのであった。

自宅に戻ってから、自分のたどった道を地図上で調べてみた。
自分は、交差点Cを左折した後、道なりに歩き続けたのだ。(一度も曲がっていないし、後戻りもしていない)
やはり納得できない。
そこでその後、3日間にわたって現場に足を運び現地調査を行った。
その結果わかったことは、
@ 交差点Cを左折したのは確実。
A 建物D、建物E、建物Fの順に通過したのは確実。

どうやら問題は交差点Cからどのルートで建物Dのところに行ったのかということに絞られた。
上の地図に書いてある道はほとんどが片道2車線の大きな道なので間違えようがない。確かこの道を外れて細い路地を通れば建物Dに行くことは可能だったが、あの時、細い路地に入る理由もないし、実際細い路地にも入って見たが、全く見覚えはなかった。
交差点Cではなくて交差点Bを左折したと思われるかも知れないが、交差点Bは何度も通ったことがある交差点だから、間違える筈がない。それは断言できる。しかも、その場合はもう一度左折しないと建物Dの横を通ることができない。
そもそも、まっすぐ歩き続けて建物Dを矢印の方向に通過することなどできないのだ。
絶対にありえないことが起こったのである。全身鳥肌立った。

それから何日か経ち、少し冷静になったところでこの現象の可能性について考えてみた。
可能性1
買い物に行ったこと自体が夢だった。
 →しかし、店で買ってきたものは今もちゃんと家の中にある。

可能性2
UFOに連れ去られて人体実験をされたあと記憶を消されたのでは。
 →さっそく自分の体をチェック。見知らぬ傷や手術後は見つからなかった。ホッと一安心。

可能性3
無意識の状態になって歩き続けていた。
 →歩き続けていた時は、意識は連続していて、ふと我に返ったら建物Dの近くを歩いていたというのではない。意識が途切れた感覚もないのである。確かに毎日の通勤経路などでは、体が道を覚えていて、何も考えずボーとして歩いていても目的地に着くこともあるだろう。しかし、初めて歩いた道でそんなことが起こるとは考えにくい。
ただ、交差点Cを左折した後、建物Dまでの景色を何一つ覚えていないのが気にはなるが。

可能性4
テレポーテーション。
 →んなバカな。非現実的過ぎるか?

可能性5
自分自身に一時的な記憶障害が起きたのではないか。
→可能性はある。つまり、C地点を左折した後、何らかの理由でルートを変更したが、そのことを全く記憶していないということである。

現在でも、あのときにいったい何が起こったのかはわかっていないが、現実的に考えれば記憶障害が起こった可能性は高い。
もし、そうだとするなら、本人はテレポーテーションしたように感じることだろう。
今回のケースでは、徒歩だったのと記憶障害が起っていた時間が短かったので近距離の「テレポーテーション?」ですんだが、車を運転していて同じことが起こったら、相当遠くへのテレポーテーションを体験することになる。気が付いたら何百キロも離れたところにいたなどというミステリー事件をよく耳にするが、あながちありえないことではないと思った。

今後、頻繁にテレポーテーションできる能力が身についたら、病院で頭の精密検査をしてもらおうと思っている。