BV10
バッテリー容量計測器

※回路図上でPA0とPA1のピン番号に記載ミスがありましたので訂正しました。 2009/01/04


 

1.概要
 ラジコン用に限らず、充電式バッテリーは長く使っていると、容量が減ってきます。手持ちのバッテリーが、いったいどの程度の容量なのか気になりませんか?
そこで、バッテリーの容量を測定できる装置を製作してみることにしました。測定原理は、バッテリーを終止電圧まで一定電流で放電させ、放電中の電流を積算することで、バッテリーの電流容量を表示します。
 勿論、バッテリー容量測定だけでなく、バッテリー放電器としても使えます。

2.仕様
・基板外形 115*100(縦*横)
・電源電圧 4.5〜5.5V
・被測定バッテリー Ni-Cd/Ni−MH 1〜10セル  リポ 1〜3セル
・放電電流 0.1〜1.0A(0.1Aステップで設定可)
・終止電圧設定 0.6〜10.0V(0.1Vステップで設定可能)
・電流容量 0〜9999mAH


3.回路図



4.部品表

品名 品番 仕様 メーカー
IC1 マイコン ATtiny26L . ATMEL
Q1 MOSFET 2SK1300 . HITACHI
C1 アルミ電解コンデンサ . 100uF/10V .
C2 アルミ電解コンデンサ . 10uF/10V .
C3 積層セラミックコンデンサ . 0.1uF .
C4 積層セラミックコンデンサ . 0.1uF .
C5 積層セラミックコンデンサ . 0.1uF .
C6 積層セラミックコンデンサ . 0.1uF .
C7 積層セラミックコンデンサ . 0.1uF .
R1 抵抗 . 120kΩ .
R2 抵抗 . 22kΩ .
R3 抵抗 . 0.1Ω .
R4 抵抗 . 330Ω .
R5 抵抗 . 1KΩ .
R6 抵抗 . 1MΩ .
R7 抵抗 . 330Ω .
VR1 半固定抵抗 . 10kΩ .
VR2 半固定抵抗 . 10kΩ .
VR3 半固定抵抗 . 100Ω .
LED1 LED . 緑色 .
BZ1 圧電サラウンダ PKM13EPYH4002-B0 . ムラタ
LCD1 キャラクタ液晶 SC1602BS-B 16文字*2列 SUNLIKE
PS1 ポリスイッチ RXFE110 1.1A レイケム
SW1〜SW5 タクトスイッチ . . .
ヒートシンク . OSH-7050-SFL . リューサン
ACアダプタ . C-GEAR05 5V/1A .



5.回路の説明
 バッテリーを終止電圧まで定電流放電させ、放電中の電流を積算することで、バッテリーの容量を計測します。
表示部には、キャラクタLCDを使い、終止電圧、放電電流、バッテリー電圧、バッテリー容量の表示を行います。
 マイコンのPWM出力を平滑化してMOSFETのゲートに電圧を印加します。MOSFETのソースを流れる電流は、抵抗R3で検出され、PWM出力にフィードバックして、電流を一定に制御します。 MOSFETは、手持ちの2SK1300を使いましたが、他には2SK2936などが使えます。MOSFETは、相当の発熱がありますから、ヒートシンクが必要です。ここでは、70*50*20、フィンの数が10枚のものを使いました。5Vファンを持っていれば、ヒートシンクに風を当てて空冷しても良いかと思います。逆に、1セルしか測定しない場合や放電電流が小さい場合は、MOSFETの発熱量も少ないので、小さなヒートシンクでもいいです。
 安全を考慮して、放電経路には、1.1Aのポリスイッチを挿入しました。ポリスイッチは、MOSFETと”固まる放熱グリス”で接着し、万一、MOSFETが発熱し過ぎても、ポリスイッチの温度上昇で電流制限されるようにしました。
 回路図中BZ1は、ブザー(と言うよりサラウンダ)で他励式の圧電タイプなら何でも構いません。このブザーは、放電終了を知らせるためのものなので、必ずしも必要ではありません。マイコンのポートが足りなくなってしまったので、放電動作中を示すLEDとブザーのポートを共用に使っています。ブザーが不要ならば、R5、R6、C4は不要です。
 本回路を動作させるために、安定化された5V電源が必要です。ここでは、秋月電子で買ったスイッチングACアダプターを使いました。普通のACアダプターは、出力表示が5Vとなっていても、負荷電流が少ない時には8V位の電圧が出ますので使えません。普通のACアダプタを使う場合は、8〜12V位のACアダプタの出力を3端子レギュレータ等で5Vに安定化させてから使ってください。 回路を動作させるエネルギーを容量測定されるバッテリーから使えば良いように思われますが、Ni-CdやNi-MH 1セルのバッテリー容量も測定したかったため、涙を呑んで別電源としました。1セルでは電圧不足なのです。しかし、回路電流は5mA〜15mAと極僅かです。
 調整は、VR1〜VR3にて行います。
VR1は、LCDのコントラスト調整で、LCDが一番見やすいところに調整します。
VR2は、電圧調整です。テスターでバッテリーの電圧を測定しながら、VR2を回して、テスターの測定値とLCDに表示される値を同じになるように調整します。このときのバッテリー電圧は、10V前後がいいです。
VR3は、放電電流の調整です。今度は、テスターを電流レンジにして、バッテリーと直列にテスターを接続します。放電電流を設定して、スタートスイッチを押します。放電電流は、スタートスイッチを押しても、すぐには流れず、1〜2分ほどしてから、設定された電流になります。電流が安定したら、、設定した放電電流になるようにテスターを見ながらVR3を回して調整します。この調整のときの放電電流は、なるべく大きな電流に設定して下さい。電流調整の時に、電流値がPWM制御の関係で10%程度ふらつきますので、ふらつきの中心値を放電電流とします。電流値にふらつきがあるので、テスターはデジタル式よりアナログメータ式の方が調整しやすいです。


6.マイコンプログラム
自作する方は、マイコンにプログラムを書き込む必要があります。
下記ファイルをダウンロードして、解凍後にできるbv1000.hexというファイルをマイコンに書き込んで下さい。
書き込みを行う際に、プログラムメモリの0x3FC番地のローバイトにOSCキャリブレーションデータを書き込んで下さい。

bv1000.zip

設定
・FUSE bit high (11100110B)
・FUSE bit low (11100001B)

RSTDISBL:0
SPIEN:0
EESAVE:1
BODLEVEL:1
BODEN:0
PLLCK:1
CKOPT:1
SUT1:1
SUT0:0
CKSEL3:0
CKSEL2:0
CKSEL1:0
CKSEL0:1


・LOCK bit (11111111B)

LB1:1
LB2:1


7.使い方
 本器に5V電源供給した後、容量を測定したいバッテリーを接続します。
次に終止電圧と放電電流をスイッチSW2〜SW5を使ってセットします。終止電圧は、Ni−Cd、Ni−Mhなら0.9V/セル、リポなら3.0V/セルが適当だと思います。
スタートスイッチを押すとLEDが点灯し、設定した放電電流で放電が始まります。
(放電中は終止電圧、放電電流の変更はできません。)
被測定バッテリーの電圧が終止電圧以下になると、ブザーが5回鳴って放電が終了したことを知らせるとともに、LEDが消灯します。
別のバッテリー容量を測定したい場合は、被測定バッテリーを接続して、スタートスイッチを押せば、続けて測定可能です。


8.使用上の注意
 装置の写真を見てわかると思いますが、放電用のMOSFETには相当大きなヒートシンクが取り付けてありますが、この大きさのヒートシンクでもバッテリー電圧が高く、且つ放電電流が大きい場合には、かなり熱くなります。実測では、バッテリー電圧12Vで1.0A放電を行うとヒートシンクの温度は70℃にも達しました。半導体は耐える温度ですが、手を触れると火傷する危険がありますので、セル数が多い(電圧が高い)バッテリーを接続する場合は、放電電流を小さくするなどの配慮をお願いします。ヒートシンクの発熱量は、MOSFETが消費する電力に比例します。MOSFETの消費電力はバッテリー電圧*放電電流で計算できますから、この電力が7〜8W以下なら火傷の心配はないでしょう。

 特にリポの場合ですが、放電終止電圧の設定を誤る(低く設定し過ぎる)と一発でバッテリーをダメにしてしまう恐れがありますので、注意して下さい。1セルなら3.0V、2セルなら6.0V、3セルなら9.0Vが適当です。

 放電電流を大きくすると短時間でバッテリー容量を計測できますが、パワーのない(内部抵抗の大きい)バッテリーでは、内部抵抗による電圧降下のため、まだ十分に容量が残っているにもかかわらず、放電が終了してしまう場合があります。そのような場合は、放電電流をなるべく小さく設定してから測定を開始して下さい。
 また、全く同じバッテリーでも、放電電流を大きくすると、その内部抵抗の影響で早く終止電圧に達するために、バッテリー容量が少なく計測される傾向があります。ですから、同じ種類のバッテリーの容量比較を行う場合は、終止電圧、放電電流の条件は同じにすべきです。

 バッテリー容量計測中に終止電圧以下になると計測を終了すると同時に、放電も停止します。この時、バッテリーは、ほぼ無負荷になるために、その電圧は急上昇して、ほぼ計測開始前の電圧近くまで回復した状態になりますが、この電圧の動きは正常なもので、放電が完了していないというわけではありません。

 バッテリー電圧が、約15.3V以上になると、ADコンバータが飽和するので、これ以上の電圧表示が出来なくなります。つまり、バッテリー電圧が15.3V以上あっても、電圧表示は、約15.3Vで頭打ちになります。特に壊れるわけではありませんが、ご注意ください。

 容量計測が終了したバッテリーを回路に接続したままにしておきますと、僅かではありますが、電流が流れます。測定終了後は、バッテリーを回路から外して下さい。

 本器は、調整の仕方にもよりますが、バッテリーの絶対容量という意味では5〜10%程度の誤差を含んでいると考えられます。そもそも、バッテリー容量自体も、測定条件などで変化するものです。しかし、1台の測定器で同一条件の計測を行うのであれば、誤差はほとんどありませんから、バッテリー容量の比較や、劣化具合、充電方法による容量変化などの計測には、有効であると考えられます。