AR70
超軽量機体発見ブザー



AR70

1.背景
数ヶ月前の話です。いつものように海岸でRCグライダーでスロープソアリングを楽しんでいたところ、風が弱まってきてスロープソアリングが出来なくなってきました。そこで、こんな時のためにと持ってきたインドア用のRC機を飛ばすことにしました。(写真の機体)


インドア専用機でも、風が弱ければ屋外でもへっちゃらでたいへん良く飛んでいました。ところが、ふと気がつくと機体が風下に流されはじめています。だんだんと風が強くなってきたようです。あわてて機体を戻そうとしてもなかなか戻ってきません。モータのパワーを上げると機体はどんどん上昇するだけでなかなか前進してきません。そうかといってパワーを落とすと、どんどん風下に流されてしまいます。普通の機体ならエレベータをダウン気味にして少しダイブさせればいいのですが、なにしろエレベータなしのインドア機です。そうこうしている間に機影は風下の防砂林の中に消えてしまいました。
不時着地点はおよそ見当がついていましたので、その周辺を1時間位探しましたが、見つかりませんでした。なにしろ受信機の価格が1万円以上もするので、それはもう必死で探しました。きっと捜索した範囲の木の上に機体はあったのだと思いますが、機体が小さいので木の葉の影に隠れて見えなかったのでしょう。「機体発見ブザーさえ装着していればこんなことにはならなかったのに」と今でも悔やんでいます。
機体発見ブザーは、小型のものでも数グラムの重量がありますから、写真のような超小型機には搭載が困難です。そこで、こんな超小型機にでも付けられるような超軽量の機体発見ブザーを作ることにしました。 もう二度とあんな悔しい思いはしたくありませんから。


2.仕様
・機能       : 機体発見ブザー
・電源電圧    : 1.8〜5.5V
・発音体     : Φ11
・重量       : 0.2g(配線含む)


3.回路図



4.部品表

. 品名 品番 仕様 メーカー
IC1 マイコン PIC10F200/OTG . microchip tecnorogy
C1 チップセラミックコンデンサ . 0.1uF .
R1 抵抗 . 1kΩ .
BZ1 圧電サラウンダ PKM13EPYH4002-B0 (中身の圧電振動板だけを使用) . ムラタ



5.回路の説明
回路を簡単化するために、受信機からの信号線は使わず電源を接続するのみの構成としました。 
回路図中にある抵抗R1は、圧電振動板に衝撃が加わったときに高電圧が発生し駆動用IC(マイコン)が壊れるのを防ぐためのもので、メーカーは抵抗挿入することを推奨しています。実験的に圧電振動板に衝撃を与えてみましたが、ICが壊れることはありませんでしたので、今回、抵抗R1は省略しています。

ブザー音発生には、PICマイコン(PIC10F200/OTG)という米粒とゴマ粒の間くらいの小さいマイコンを使いました。


発音体は、ムラタの圧電サラウンダ(PKM13EPYH4002-B0)を分解して中の圧電振動板だけを取り出して使いました。


組み立ては、軽く作るため基板は使用していません。
マイコンにプログラムを書き込んだら、マイコンの1ピン、6ピンは使わないのでニッパを使ってカットします。
マイコンの裏側にパスコンC1を直接ハンダ付けします。
 

あとは電源線を取り出し、圧電振動板とマイコンを接続します。
回路部は、ショートを防ぐために熱収縮チューブで保護しました。
   

圧電振動板を裸のままでブザー動作させると微かな音しか聞こえてきません。まるで蚊の羽音のようです。
実際に使用する場合は、圧電振動板を機体のどこかに貼り付けて使います。こうすることで音を大きくすることが出来ます。
さらに音を大きくするために、圧電振動板の共振周波数で振動させるのが普通です。しかし、圧電振動板は筐体に貼り付けて使用するので、貼り付ける筐体によって共振周波数が変化してしまうことが考えられます。
そこで、発振周波数を低い周波数から高い周波数へと連続的に変化させて、これを繰り返すことにしました。周波数をスィープさせれば、どんな筐体に付けられても、どこかで共振するだろうという考え方です。(下図参照)


音の周波数を連続的に変化させているので、ちょっと変わった音色になりました。
音色は、こんな感じです。
ar70_tone1.wav

今回試作した機体発見ブザーは、圧電振動板が小さいため、音は小さく、比較的静かな屋外環境でテストした結果では、ブザー音の聞こえる範囲は10mが限界のようです。それでも機体をロストしたときにブザーを搭載しているか否かでは雲泥の差があると思います。
勿論、もっと大きな圧電振動板を使っても構いません。その方が大きな音が出ます。特にバルサ組で四角い胴体断面の機体でしたら、胴体の内側から圧電振動板を貼り付ければ、外見を損なうこともありません。

下の写真は、AR70を装置した機体です。圧電振動板は、翼にセロハンテープで貼り付けました。  
  

AR70の電源ラインにオス/メスのコネクタを付けておくと便利です。機体発見ブザーが不要な場合はバッテリーとRC装置を直接接続して使います。もし、機体発見ブザーが必要になったら、バッテリーとRC装置との接続をAR70コネクタを介して行うようにすればいいのです。
 


6.マイコンプログラム
自作する方は、マイコンにプログラムを書き込む必要があります。
下記ファイルをダウンロードして、解凍後にできるar701.hexというファイルをマイコンに書き込んで下さい。
書き込みを行う際に、プログラムメモリの最終番地(0x00FF)にOSCキャリブレーションデータ(MOVLW命令)を書き込んで下さい。

ar701.zip

※コンフィグレーション ワードをマニュアルで設定する場合には下記のように設定して下さい。
MCLRE : 0
CP : 1
WDTE : 1
その他のビット : 0


7.使い方
使い方は簡単で、電源を接続するだけです。
電源を接続すると約3秒間だけ確認のためのブザーが鳴った後ブザー音は停止します。
その後、約20分経過するとブザーが鳴り始め、電源を切るまで鳴り続けます。


8.注意事項
 ・今回使用した圧電振動板は、非常に薄く少し力を加えただけで、すぐに変形してしまいますので注意してください。
 ・圧電振動板の中心の白い部分は、非常に錆びやすいので直接手を触れないようにして下さい。