1.はじめに
最大8本のリポ・バッテリーを同時に充電可能な回路で、100%充電せずに敢えて充電量を80%~90%とした「いたわり充電」回路となっています。
リポの充電量を腹八文目にすることで、バッテリー寿命を伸ばす効果が期待できます。
通常のリポ・バッテリーの充電について上図で説明します。
リポ・バッテリー(リチウム・イオン・バッテリーも同じ)の充電は、CCCV(Constant Current,Constant Voltage)と呼ばれる充電方式で充電が行われます。
まず充電始めは、一定電流(1C程度)で充電を行います。
すると、バッテリー電圧は徐々に上昇していきます。
そして、ある電圧(通常は4.2V)に達したところで、今度は4.2Vという電圧を維持するように充電電流を制御します。
すると、今度は充電電流が徐々に減少していき、(1/10)C~(1/20)C程度になったところで充電完了とします。
この一般的なCCCV充電方式については、充電専用のICの入手が可能なので、それらを使ってもいいです。
しかし、バッテリー寿命を延ばすため、充電量を80%~90%程度に押さえた「いたわり充電」にしたかったのですが、そのような目的の充電ICが見つかりませんでした。
そこで、いたわり充電回路を製作することにしました。
ところで、いたわり充電するにはどうすれば良いのでしょうか?
2つの方法が考えられます。
1つ目の方法は、バッテリーの最高到達電圧を4.2Vではなく、4.1Vとか4.0Vと少し低めにすることで実現出来ます。
2つ目の方法は、CC充電でバッテリー電圧が4.2Vに達したところで充電完了として、CV充電を行わないというものです。
CV充電期間では、充電電流が減少してくるので、時間をかけた割には充電量は増えませんので、充電時間から見ると、後者の方が有利そうです。
それに、CV充電は、バッテリーが「もうお腹いっぱい」と言っているのに、無理やり口をこじ開けてご飯を詰め込んでいるように思えてなりません。
そのような理由から、本回路はCC充電方式としました。
試しに手持ちの70mAHのリポ・バッテリーで比較してみたところ、CCCV充電では69mAH、CC充電のみでは61mAHで、本回路の充電量はCCCV充電の88%という結果でした。
注意点ですが、CC充電のみの充電方式の場合、劣化したバッテリーでは、内部抵抗が高いため、CV充電を行わないと著しく充電量が少なくなってしまいます。
ただ、そのようなバッテリーは、大きな電流を流すことができないバッテリーであり、モーター動力用としては寿命と考えられます。
自作する場合は、自己責任でお願いします。
2.機能
●1cellリポ・バッテリーの充電(いたわり充電)
●最大8本同時充電可能
3.仕様
●基板外形 : 110*52*10(縦*横*高さ))
●電源電圧 : 6V
●負荷電流 : 100mA
4.回路図
U0~U7
全体回路(U1~U7は上図の回路)
5.部品表
部品番号 |
部品名 |
仕様 |
メーカー |
備考 |
IC1 |
三端子レギュレータ |
LM2937 |
TI |
|
IC2 |
マイコン |
ATmega16 |
MicroChip Technorogy |
|
IC3 |
シャント・レギュレータ |
TL431 |
TI |
他メーカーでも可 |
Q100~Q107 |
トランジスタ |
2SB598 |
三洋 |
代用品2SA1020 |
Q200~Q207 |
トランジスタ |
2SA1015 |
東芝 |
|
Q300~Q307 |
抵抗内臓トランジスタ |
RN1202 |
東芝 |
|
D100~D107 |
ダイオード |
1N4007 |
Diodes Incorporated |
1Aクラスのシリコンダイオードならなんでも可 |
LED100~LED107 |
LED |
|
|
赤色 |
C1 |
アルミ電解コンデンサ |
100uF/25V |
|
|
C2 |
アルミ電解コンデンサ |
100uF/10V |
|
|
C3~C4 |
セラミックコンデンサ |
0.1uF/25V |
|
|
C5 |
セラミックコンデンサ |
0.001uF/16V |
|
|
R1~R5 |
抵抗 |
100kohm |
|
|
R6 |
抵抗 |
1kohm |
|
|
R7 |
抵抗 |
10kohm |
|
|
R8 |
抵抗 |
13kohm |
|
|
R100~R107 |
抵抗 |
6.2ohm |
|
1/8(W) |
R200~R207 |
抵抗 |
1kohm |
|
|
R300~R307 |
抵抗 |
100kohm |
|
精度1%品 |
R400~R407 |
抵抗 |
100kohm |
|
精度1%品 |
R500~R507 |
抵抗 |
470ohm |
|
|
VR1 |
トリマ抵抗 |
5kohm |
|
|
6.マイコンプログラム
自作する場合は、マイコンにプログラムを書き込む必要があります。
下記ファイルをダウンロードしてマイコンへの書き込みを行って下さい。
(右クリックで ”対象をファイルに保存” を選択)
LC500.hex
書き込み時の設定
・FUSE 0x99(High_byte)、 0x22(Low_byte)
・LOCK 0xFF
7.調整
VR1を調整してシャント・レギュレータの出力電圧(IC2の32番ピン)を4.2Vに合わせます。
8.使い方
リポ・バッテリーを接続するだけで、充電を開始します。
充電中は、対応するLED(LED100~LED107)が点灯します。
充電が完了するとLEDは消灯します。
9.その他
本回路のCC充電時の充電電流は、約100mAとなっています。
この充電電流はR100~R107の値によって変わり、充電電流は、0.65/R100で計算出来ます。
200mAを超える電流にする場合は、抵抗R100~R107とトランジスタQ100~Q107の発熱に注意してください。
完成品の写真では、市販の降圧型のDCDCコンバータ(出力6Vに調整)を基板上に搭載しています。
このようにDCDCコンバータと組み合わせることで、入力電圧8V~24Vとすることも出来ます。